連載「重量木骨で家を建てる」

本当の家づくりに必要な心得「重量木骨(SE構法)で家を建てる」

なぜ、私たち「つくり手の会」会員は、家づくりの工法に「重量木骨(SE構法)」を選んだのか。
「重量木骨(SE構法)」をおすすめする理由を連載で綴っていきます。

第二章 「綱渡りの島 日本 ~価値が上昇していく欧米型の住宅~」   2008.07.23(WED)

 ジョン・シュレンジャー監督のアメリカ映画『パシフィック・ハイツ』(1990年)は、アメリカと日本の住宅事情の違いを如実に示していて興味深い作品です。

 舞台はサンフランシスコの洒落た住宅街に建つ築100年以上経過している中古物件です。若いカップルがローンを組み75万ドルで手に入れ、自分たちでペンキを塗るなどリフォームを施します。

 借金返済のために間借人を募集して返済を目論んだのですが、悪質な間借人だったためにストーリーはサイコスリラーへと発展してしまいます。ようやく事件が解決して住宅を売りに出した時、その家は購入時よりも10万ドル高い85万ドルで見事に資産として評価されたのです。

 ラストシーンでは新しい購入者が建物を見にきて、「こんなに手をかけた住宅なのにどうして手放すのですか」と質問するのですが、「投資のつもりでしたから」という売り主の一言に納得します。10万ドルの上昇分は土地の値上がりではなく、明らかに建物の価値そのものの上昇分なのです。欧米では中古物件の価値が高まるということは決して珍しくありません。

 しかし、日本では逆なのです。家を新築して住んだ瞬間から評価額は下落し始めるのではないでしょうか。例えば、3000万円の建売住宅を購入し、数カ月住んだ後に中古住宅として売りに出しても、ダウンサイジングしか方法がないのが現実です。

 欧米と日本の格差を一言で言い表わす「欧米型の家作りは貯蓄作り、日本の家作りは借金作り」という言葉は、まさに至言でしょう。

 ここで特に注目していただきたいのは住宅の寿命です。イギリスの住宅は141年、ドイツの住宅は79年というのが住宅ストックの平均寿命です。「木と紙の文化」である日本は26年と諸外国に比べ極端に寿命が短く、資源の無駄使いをしているといえます。

 では、日本とアメリカにおける既存住宅の流通量の格差についてはどのように解釈すれば納得できるのでしょうか。住宅そのものの平均寿命にもその理由の断片が見出せますが、それだけではないような気もします。

 戦前の日本では大阪で9割、東京で7割は民間の借家でした。日本にも小さな家から豪邸まで借家の供給システムが整備されていて、漱石、鴎外をはじめ谷崎潤一郎や志賀直哉なども借家人だったそうです。その借家供給システムの中からあのような名作が生み出されたのだといいます。

 過去のこのような住宅の流通事情も、戦災がきっかけで住宅不足に転じ、戦後復興の国の住宅政策や政治的要因から、現在のように欧米との格差が顕著になってしまったのではないでしょうか。

目次へ戻る)  by: Shimizu

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「本当の家づくり」

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